腱板損傷から拘縮肩につながる理由
2026年10月1日

リハビリの順番を間違えると肩は固まりやすくなります
肩の痛みで多い疾患の一つに、腱板損傷があります。
腱板損傷というと、「肩の筋肉や腱が傷んでいる状態」と考えられますが、実際の臨床ではそれだけで終わらないことがあります。
特に注意したいのが、腱板損傷のあとに肩が固まってしまう拘縮肩です。
「痛みは少し落ち着いたけど、腕が上がらない」
「後ろに手が回らなくなった」
「夜間痛が続いて、怖くて動かせない」
このような状態では、腱板損傷に加えて、肩関節の拘縮が関係している可能性があります。
腱板損傷と肩関節拘縮が同時に存在するケースは、治療方針やリハビリの進め方が難しくなることが報告されています。腱板を保護する必要がある一方で、肩を動かさなさすぎると拘縮が進むためです。(PubMed Central (PMC))
腱板とは何か
腱板とは、肩関節を安定させる深部の筋肉と腱の集合体です。
主に次の4つで構成されています。
・棘上筋
・棘下筋
・小円筋
・肩甲下筋
これらは肩を動かすだけでなく、上腕骨頭を関節の中心に保つ役割があります。
肩関節は人体の中でも可動域が非常に大きい関節です。
その分、骨だけで安定する構造ではなく、腱板や関節包、靱帯、肩甲骨周囲の筋肉によって安定性を保っています。
つまり腱板が損傷すると、肩関節の動きそのものが乱れやすくなります。
腱板損傷で起こる主な症状
腱板損傷では、次のような症状が出ることがあります。
・腕を上げると痛い
・横から腕を上げにくい
・夜間痛がある
・肩に力が入りにくい
・服を着る動作がつらい
・髪を洗う、結ぶ動作がつらい
特に夜間痛が強い場合、無意識に肩をかばうようになります。
この「かばう動き」が長く続くと、肩関節は少しずつ動かしにくくなります。
拘縮肩とは何か
拘縮肩とは、肩関節の可動域が制限され、肩が固まったように動かしにくくなる状態です。
特に制限されやすい動きは次の通りです。
・外旋
・挙上
・結帯動作
・水平伸展
・内旋
拘縮肩では、筋肉が硬いだけでなく、関節包や滑膜、靱帯などの組織が硬くなることがあります。
いわゆる五十肩や凍結肩でも、関節包の線維化や関節内容積の減少が関与するとされています。肩関節拘縮では、関節包や烏口上腕靱帯、腱板疎部などが硬くなることが問題になります。(PubMed Central (PMC))
腱板損傷から拘縮肩になる流れ
腱板損傷から拘縮肩へ移行する流れは、次のように考えると分かりやすいです。
・腱板を損傷する
・痛みで肩を動かさなくなる
・夜間痛や不安でさらに動かせなくなる
・肩甲骨や胸椎の動きも低下する
・関節包が硬くなる
・可動域制限が強くなる
・拘縮肩へ移行する
最初は「痛くて動かせない」状態です。
しかし時間が経つと、「固まって動かない」状態へ変わっていきます。
ここが非常に重要です。
痛みが原因で動かさなかった肩は、時間の経過とともに本当に動きにくくなります。
腱板損傷と拘縮肩ではリハビリの目的が変わる
腱板損傷のリハビリでは、腱を守ることが重要です。
一方で、拘縮肩では可動域を回復させることが重要になります。
つまり、両方が関係している場合は、
・動かしすぎると腱に負担がかかる
・動かさなすぎると拘縮が進む
という難しさがあります。
このため、腱板損傷後のリハビリでは、単純に「安静」でも「強く動かす」でもなく、状態に合わせた段階的な刺激が必要になります。
腱板修復後のリハビリに関する米国肩肘セラピスト協会のコンセンサスでも、リハビリは腱板の治癒状態、断裂サイズ、組織の質、患者背景を考慮しながら、段階的にコントロールされた負荷を加える考え方が示されています。(PubMed)
やってはいけないリハビリ
腱板損傷から拘縮肩へ移行している場合、自己判断のリハビリは注意が必要です。
避けたい対応は次の通りです。
・痛みを我慢して強くストレッチする
・夜間痛が強い時期に無理に動かす
・腱板損傷があるのに筋トレを急ぐ
・肩だけを無理に回す
・痛い方向へ反復して動かす
・安静だけで長期間放置する
特に「固まるのが怖いから、とにかく動かす」という考え方は危険です。
炎症が強い時期に無理な可動域訓練を行うと、痛みが増えてさらに動かせなくなることがあります。
逆に、痛みが怖くて全く動かさない期間が長くなると、拘縮が進むリスクがあります。
リハビリで大切なのは順番
腱板損傷と拘縮肩のリハビリでは、順番が重要です。
大きく分けると、次の流れで考えます。
1. 痛みと炎症の確認
まず大切なのは、現在の痛みの状態を確認することです。
確認するポイントは次の通りです。
・安静時痛があるか
・夜間痛があるか
・動かした時だけ痛いのか
・どの角度で痛むのか
・力を入れると痛いのか
夜間痛や安静時痛が強い場合は、炎症が強く出ている可能性があります。
この段階では、強いストレッチや筋力トレーニングよりも、痛みを悪化させない範囲で肩の状態を整えることが優先されます。
2. 肩甲骨と胸椎の動きを確認する
肩の動きは、肩関節だけで成立しているわけではありません。
腕を上げる時には、
・肩関節
・肩甲骨
・胸椎
・肋骨
が連動しています。
腱板損傷後に肩をかばっていると、肩甲骨や胸椎の動きも低下しやすくなります。
この状態で肩関節だけを無理に動かすと、腱板や関節包に負担が集中します。
そのため、リハビリでは肩だけでなく、肩甲帯や胸椎の動きも確認することが重要です。
3. 関節包の硬さを評価する
拘縮肩では、関節包の硬さが大きな問題になります。
特に外旋制限が強い場合、関節包の拘縮が関与していることがあります。
確認するポイントは次の通りです。
・外旋制限
・挙上制限
・結帯動作
・左右差
・他動運動でも制限があるか
筋肉の痛みだけであれば、他動的に動かすと比較的動くことがあります。
しかし関節包が硬くなっている場合は、自分で動かしても、人に動かしても制限が出ます。
この見極めが重要です。
4. 腱板に負担をかけすぎない可動域改善
拘縮があるからといって、いきなり強く伸ばすのは適切ではありません。
腱板損傷がある場合は、腱に過剰な牽引ストレスをかけない範囲で可動域を改善する必要があります。
リハビリでは、
・痛みの少ない範囲での他動運動
・肩甲骨の動きの改善
・胸椎伸展の改善
・関節包への段階的な刺激
・腱板に負担をかけにくい角度での運動
を組み合わせます。
腱板疾患のリハビリに関する臨床ガイドラインでも、評価、教育、運動療法、必要に応じた徒手療法を組み合わせることが推奨されています。(PubMed)
5. 腱板の再教育
可動域が少しずつ戻ってきたら、次に必要なのが腱板の再教育です。
腱板は大きな力を出す筋肉というより、肩関節を安定させる筋肉です。
そのため、単純な筋トレではなく、
・上腕骨頭を安定させる
・肩甲骨と連動させる
・痛みのない範囲で働かせる
・負荷を段階的に上げる
ことが重要です。
いきなり重いチューブ運動やダンベル運動を行うと、腱板や肩峰下組織に負担がかかることがあります。
6. 日常動作へ戻していく
最終的には、日常生活や仕事、スポーツ動作に戻していきます。
確認する動作は次の通りです。
・洗髪動作
・着替え
・背中に手を回す動作
・荷物を持つ動作
・デスクワーク姿勢
・スポーツ動作
この段階で重要なのは、痛みがないことだけではありません。
肩甲骨、胸椎、腱板が連動して動いているかを確認する必要があります。
腱板損傷後の拘縮は放置しないことが重要
腱板損傷後の肩は、痛みによって動かせなくなりやすい状態です。
この時期に適切なリハビリを行わないと、肩関節の可動域が低下し、拘縮肩へ移行することがあります。
一方で、無理に動かしすぎると腱板に負担がかかります。
つまり、必要なのは、
・今どの段階なのか
・腱板にどの程度負担をかけてよいのか
・関節包の硬さはどの程度か
・肩甲骨や胸椎は動いているか
を確認しながら進めることです。
腱板損傷と肩関節拘縮が同時にある場合、治療やリハビリは一律ではなく、肩の状態に合わせて調整する必要があるとされています。(PubMed Central (PMC))
当院が重視していること
当院では、腱板損傷から拘縮肩へ移行している可能性がある方に対して、痛みのある部分だけを見るのではなく、肩全体の機能を評価します。
確認する主なポイントは次の通りです。
・腱板の状態
・夜間痛の有無
・関節包の硬さ
・外旋制限
・肩甲骨の動き
・胸椎の可動性
・肩を動かす時の代償動作
・日常生活で困っている動作
そのうえで、状態に合わせて段階的に対応します。
・痛みと炎症のコントロール
・肩甲帯の動きの改善
・関節包への段階的なアプローチ
・腱板の再教育
・日常動作への復帰
腱板損傷と拘縮肩では、リハビリの順番が非常に重要です。
痛みを無視して動かすのでもなく、怖がって動かさないのでもなく、肩の状態に合わせて適切な刺激を入れることが大切です。
まとめ
腱板損傷は、肩の痛みや力の入りにくさだけでなく、拘縮肩につながることがあります。
特に重要なのは次の点です。
・腱板損傷後は痛みで肩をかばいやすい
・動かさない期間が長いと関節包が硬くなりやすい
・無理に動かしすぎると腱板に負担がかかる
・肩甲骨や胸椎の動きも可動域に関係する
・リハビリは順番が大切
「痛いから動かさない」
「固まるのが怖いから無理に動かす」
どちらも注意が必要です。
腱板損傷後に肩が上がりにくい、夜間痛が続く、後ろに手が回らないという方は、早めに状態を確認することが大切です。
ugook整骨院 浜松町・大門・芝公園
院長:佐々木


